はじめに

本日も多くの指標が発表されており、またこれからまだ複数の発表が控えております。そんな中、為替市場に大きな影響を及ぼす可能性があるものを2つ紹介していきたいと思います。

1つは「米ADP民間雇用者数」で、2つ目は「米ISM非製造業景気指数」になります。本日に関してはこれら2つが特に重要であると判断しているので、発表前にその内容や市場に与えうる影響などについて書いていければと思っています。

1つ目の米ADP民間雇用者数は日本時間21時15分、2つ目の米ISM非製造業景気指数は23時の予定であるのでそれまでに内容な影響について把握してください。

米ADP民間雇用者数について

こちらは指数名を見ていただければおおよその見当はつくかと思いますが、アメリカで発表される民間雇用者数についてのものです。給与明細作成代行会社であるADPリサーチ・インスティテュートが給与名簿をもとに集計を行なった結果を発表するものなります。超重要とされる雇用統計などと同様に経済の現状や今後の方向性などを占う上ではぜひぜひ確認しておきたいものの1つになります。

ちなみに4月分の発表では昨年7月以来の大幅な上昇というサプライズが起こったこともあり、今回の発表もかなりの注目を集めると考えても良いです。

参照:ブルームバーグ

こちらは2016年5月から2019年4月までの3年間のデータをまとめたものになります。2019年に突入してからは雇用社数は減少傾向にありましたが、4月発表において約27.5万人増という結果になっています。

今回の発表で重要になってくるのは、以前の記事でも書きましたが単なる数値の上昇ではありません。指標発表直後に大きく為替変動が起きるのはどのような場合でしたでしょうか?最も重要な要素となるのは…

市場コンセンサスとの大きな乖離

でしたね。ちなみに今回の発表前予想数値は「18.5万人」になります。つまり、もし結果が20万人となったとしたら、確かに前回よりも数値自体は悪化しておりますが、市場予想を大きく上回っている結果なので好感される可能性が高いということです。

市場予想を事前に把握しておらず、前回よりも悪い数値結果だからといって米ドルでのショートポジションを持ってしまうと痛い目にあう確率が大きくなってしまうということです。これはFXだけでなく株式投資にも応用することが可能ですね。例えば決算発表などです。確実に売上高は前回を大きく上回ると考えていても、発表直後に株価は下落する可能性も考えられます。その理由は市場が期待値を高めすぎているからです。先ほども書いたように、前回数値を上回っていたとしても過度な期待をしすぎたせいでインパクトが小さかったということが起こると株価が上がる可能性は小さくなってしまいます。

以上をまとめると指標発表や企業の決算発表については市場予想(コンセンサス)を把握してその後のインパクトに備えることが重要になってきます。

では話を米ADP民間雇用者数に戻します。こちらの指標発表はもう1つ大きな役割を担っています。既に気づいている方も多いかもしれないですが、それは雇用統計への期待へ繋がるわけです。米雇用統計は最も重要視されている指標の1つですので投資家にとっては絶対に把握しておかなければならないものになります。経済指標というと為替取引:FXトレーダーのみが見ているものであると思っている方も多いかもしれないですがそれは大間違いです。

例えば、雇用統計の数値が大幅に改善され、しかもその速報値は市場コンセンサスを大きく上回っていたと仮定します。その時、米ドルは大きく買われる可能性が高く為替はドル高方向に向かう確率が極めて大きくなりますよね。米ドル/円という通貨ペアで考えた場合、円はリスク資産であると考えられているため円安ドル高とはリスクオンの状態であると言えます。そのため翌日の株式市場も大きく変動することがあるので決して関係ないとは言えないということです。一般的にはドル高株高、円高株安とも言われているので念のために参考にしてください。ちなみに4月の米ADP民間雇用者数の結果に対する見解についてもBloomberg内の記事にて書かれていたので共有させて頂きます。

・前月からの持ち直しは、労働市場の基盤安定を示唆。企業は従業員の採用とつなぎ留めに努めている。前月は18カ月ぶり低水準の速報値から上方修正された。3日発表の4月の米雇用統計では、雇用者数は過去3カ月平均の18万人をわずかに上回る伸びが予想されている
・ムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ ザンディ氏は「雇用市場はしっかりしており、企業は欠員の確保に懸命に取り組んでいる」と指摘。ムーディーズはADPと共同で集計調査を行う。「今年初めに見られた経済の軟調局面は雇用に大きな影響を及ぼしていない。4月の雇用増加は経済の強さを誇張しているものの、拡大の継続を示唆している」と述べた

引用元:Bloomberg

労働市場の基盤安定については短期で成せるものではなく、今後中長期的に継続すると考えられます。5月発表予想としては18万人増加が見込まれていますが、この数値を先月のように上回る可能性も十分に残されており、そうなった場合には為替に大きな変動が伴うことになりますね。このような数値結果に関しては市場は迅速に織り込むことになりますが、このような重要指標発表前に過度に偏ったポジションを持つことはオススメしません。また、あらかじめ指標予想を織り込んでおくことでリスクヘッジに繋がるだけではなく、その後すぐに始まる可能性のある大相場に備えることも可能になります。では続いて、さらに重要であると考えられる米ISM非製造業景気指数について考えていきます。

米ISM非製造業景気指数について

まず、ISM非製造業景気指数とは。

全米供給管理協会(ISM=Institute for Supply Management)が算出する非製造業の景況感を示す指数のひとつで、毎月第3営業日に発表される。毎月発表される米国の主要指標の中で最も早い「ISM製造業景況感指数(毎月第1営業日発表)」とともに、米国の景気先行指標として注目されている。 

非製造業(375社以上)の購買・供給管理の責任者を対象に、各企業の受注や在庫、価格など10項目についてアンケート調査を実施。「良くなっている」、「同じ」、「悪くなっている」の三者択一の回答結果を集計し、季節調整を加えた事業活動・新規受注・雇用・入荷遅延の4つの指数をもとに、ISM非製造業景況感の総合指数を算出する。 

ISM製造業景況感指数と同様に、0から100までのパーセンテージで表し、50%を景気の拡大・後退の分岐点、50%を上回ると景気拡大、50%を下回ると景気後退を示す。

引用元:野村証券公式ホームページ

説明については上記の通りですが、今回発表されるISM非製造業景気指数に対して既に第1営業日に発表されているISM製造業景気指数というものがあります。こちらの発表や市場予想は今回の参考にもなるものなのでしっかりチェックしておきましょう。ちなみに一昨日発表されたISM製造業景気指数はどうだったかというと…。

米供給管理協会(ISM)が3日(日本時間で月曜日)に発表した製造業景気指数ですが、米中貿易問題も大きく影響して市場予想を下回る低水準にまで落ち込んでしまいました(2016年10月以来)。こちらについても画像で確認して見てください。

ISM製造業景気指数結果
引用元:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-06-03/PSJ09UT1UM1101

上の画像を見ていただくと昨年8月を最も高水準として、その後は多少の上下動はあるものの数値は全体的に落ち込んでいますね。赤矢印の先端が示している部分が2016年10月に付けた水準になっているので、この3年間で大きな浮き沈みがあったことが一目で理解できるのではないでしょうか。

米中間において関税の引き上げ、それに対する報復課税が大きく影響していることは言うまでもありません。米国については日本に対しても貿易面で強気な交渉をしていることからも、貿易問題はこれからさらに大きくなることも予想されます。製造業景気指数は今後の景気水準を占う者としては非常に重要視されている仕組みについて、考えてみれば当たり前のことかもしれないですが簡単に解説しておきます。

製造業側が景気拡大を感じているのはどのような状況でしょうか?それは自社製品が飛ぶように売れている状況を指します。ではなぜそのような状況になるのかと言うと、それは消費が活発になっているからです。

景気拡大サイクルとは…。消費・生産・雇用・賃金の増加が上手く循環している状況を指します。消費が増えれば当然企業の生産活動は活発化しますし、そのためには多くの人手が必要になり雇用の増加に繋がります。その結果、労働力に対する賃金の絶対量は増え、それがさらなる消費活動に直結していきます。このようなサイクルを考えると、雇用統計や製造業景気指数で景気水準を測ることが出来る仕組みについては納得いただけるのではないでしょうか。

では、先月(4月)のISM非製造業景気指数結果はどのようなものであったのかを見ていきましょう。一昨日の製造業景気指数結果を考えると見る前に予想できてしまうかもしれないですが…。

引用元:http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/macro/2019/katsu190503NonManufacturingISM1904.pdf

こちらが過去2年間のISM非製造業景気指数の結果一覧になります。最も注目していただきたいのは総合指数欄になります。4月は55.5となり2ヶ月連続の下落。一応ではありますが、景気拡大・後退の分岐点基準は50%であるため、まだまだ景気の先行きは明るくないか?と考える方も少なくはないかもしれないですね。ただ、完全に景気後退してから気付いたのではナンセンスであり、その予兆をどれだけ察知してそれに合わせた動きを取れるのかが重要になってきます。貿易問題を筆頭に明らかに景気にマイナスの影響を与える要素はあるのにも関わらず景気指数に関してはほぼほぼ現状維持。この結果を見て、あるものに似ていると感じることが出来た人はいますかね。ヒント:NYダウ指数平均。

NYダウ指数の長期チャートを見ていただくと綺麗なトリプルトップを完成しつつある状態でしたね。チャートもこの後に掲載しておりますが、現在はライトトップ(3つ目の山)を形成してネックライン方向に下げています。つまり、あくまで個人的にですが今の微妙な経済状態が株式市場にも影響を与えている:もっと分かりやすく端的に言うと「投資家すらもどうして良いのか分からない状態」であるのではないでしょうか。トリプルトップということは、確かに3回は同じ水準まで株価は押し上げられていますが、市場に対する明らかな不透明感は出来高に全て現れています。日経平均株価の週足チャートにも同様のことが言えますが、出来高は右肩下がりに減少しておりリスクオフムードがプンプン漂っているのです。

NYダウ週足チャート

こちらはNYダウ平均の5年チャートになります。昨夜は500ドル以上上げていますが、チャートを確認して分かるように誤差の範囲でしかありません。ここから、上げを連発してトリプルトップの高値を越えることになると話は別で、今後大きな上昇を見込むことが出来ますが現状そのような議論にはならないということになります。チャート下部に出来高を表示しておりますが、同じ高値をマークしても回を追うごとにその量は減少傾向にあることが確認していただけるかと思います。株式市場から徐々にではありますが資金が抜けているのでは…?と推測できますが、全ては指標結果が物語っているように経済状態の不透明感が原因であるとそこそこの自信を持って言うことが出来ます。

続いて米ドル/円チャートを見ていきましょう。理由は日本円は現在の安全資産と考えられているから。昔は「有事のドル買い」とよく言われたものですが、それに関してはリーマンショックを境に状況が大きく変化しています。今、安全資産の代表格としては日本円(JPY)やスイスフラン(CHF)が挙げられますので参考までに覚えておいて下さい。

参照元:Trading View

こちらは米ドル/円の5年チャートになります。ざっくりとではありますがチャートは右肩下がりになっており、ドルは比較的売られていると認識できるかと思います。特に長期的なレジスタンスライン水準の突破には至っておらず、今後も円高方向への推移が予想されます。現状、NYダウについても完全にトリプルトップを形成したのではなく崩れきっていないので為替についても明らかな円買いといった目立った動きは見えていません。どちらのチャートを見ても言えることは「はっきりしない」相場であると言うこと。裏返すと投資家にとっては非常に厄介な相場であることは間違いありません。もし、明らかな景気後退を察知出来たら・株式チャートが完璧なトリプルトップを形成したら・不自然なほどの円買いが行われたら、取引はしやすいですよね。

推奨書籍の紹介

最後に投資をする上で私の推奨する書籍を数冊紹介して今回は終えたいと思います。

ウォールストリート・ジャーナル式経済指標読み方のルール [ サイモン・コンスタブル ]

価格:1,728円
(2019/6/5 19:27時点)
感想(7件)

1冊目は「ウォールストリート・ジャーナル式経済指標読み方のルール」になります。特にFXで利益を上げていきたい人にとって必ず抑えておきたいのは経済指標の読み方です。経済指標は全て把握しなくてはならないのではなく、相場に大きな影響を与えるであろう重要なものを確実にマスターする必要があります。月に数回しかトレードをしなくとも、重要指標の際に大きなリターンを得ることも可能ですのでまずは1冊目を通して見てはいかがでしょうか。

日本テクニカル分析大全 [ 日本テクニカル・アナリスト協会 ]

価格:7,020円
(2019/6/5 19:31時点)
感想(3件)

2冊目は「日本テクニカル分析大全」になります。これまでにも何回か紹介していますし、こちらの書籍については有名トレーダーでも推奨している方が多いオススメの1冊になります。テクニカル分析については人それぞれ適した方法があると思いますので、まずは色々な手法を勉強して最も自分に合っているものを見つけて下さい。では今回は以上になります。